佐山雅弘の音楽旅日記

初夏の日射しが気持ちよい中庭でワインをいただいている。さりげないオブジェ もそこここにあるにはあるが、なんといってもこの建物自体がとても居心地のよい 空間を提供してくれていて、”建築”というものが、アートであることに改めて気付く。

岡山の”松本co-orporation”という建築事務所のホールを借りてのジャズコンサー トに来たのだが、ここの社員は幸せですね。広ーい中庭に続く50席程のティルー ムは使い放題。勿論、ワイン、コーヒー、フレッシュジュ-ス等自由に飲めるし、 常時ギャラリーでは何かの展示をしてるし、折々コンサートはあるしで、至れり尽 くせリ…..少なくとも外部者にはそう見える。

主催者は全くの素人なのだが、無理を言って倉敷に居る、オレにとっての日本一 の調律師を頼んでもらった。ユニゾンが潔く揃っていながら、3オクターブ離れたヴ ォイシングまでピタリとハマる….っていうのは、ありそうでなかなか無いのだ。 しかも、コンサートが進んでゴンゴン鳴らしていっても、いっこう弛んでこないの です。テクニックも凄いんだろうけど、音感とか、美学的な趣味の相性だろうと思 う。個性や好みが結果に対して大きな割合を占める作業に於いて、万人に対する正 しさはありえないもんね。音楽も、建築も、そして多分、生きていくことも…..。

普段ライブに来れない人、つまり若いお母さんとちいさな子供のためのマチネを やった。そういう人たちに夜の芸を聞かせてもいかがなものかとは思ったが、ピア ノと自分に入り込んだ後に我に還ってみると大受けしていて、まずは良かった。逆 に夜の部のほうが”ワルツフォーデビー弾けませんか”なんて、オレの芸でなく、 御自分にとってのジャズをたまたま来た芸人に期待するという、間違ってはいない が、あまりありがたくはない聞き方をする大人が多い…..いや、いいんですよ、私 ァそれは上手に弾きますし、お好きな曲を提供して差し上げたい、お客様により楽 しんでいただくために 、つたない芸ながら常日頃磨きをかけ、当日は心身の調子を整えて臨んでいるんで すから….

ところで岡山というのはどうも人間がのんびりしているようだ。歴史上、侵略も なく、気候的にも穏やかで、地震にも台風にも縁がないせいだろうか。岡山県の形 はフランスと相似形なのでラテン系nonchalant (気にしない)な気質なのだという説はあてにはならないにしても、どうものびのび している。前回訪れた時のことだけれど…..

我々を連れまわしてくれる女性が商店街の真ん中に車をとめて、とある店に挨拶 だか道を尋ねるんだかで入って行ってしまった。車中に残った我々は後続車に対す る後ろめたさで気が気じゃないんだが、並んだ車たちも、クラクションを鳴らすで もなく、じっと待っている。やがて何事もなかったように走り出し、しばらくして 畑の曲り角にきた時、おじいさんがのんびりキョロキョロしながら我々の曲がろう とする道をゆーーーーーっくり歩くのだが、運転手の彼女は静かな微笑みをその若 い唇にうかべたまま、じーーーーーっとまっている。一分間ほどのことだが、じっ と待ってる一分てなァ長いですよ。なんだかほのぼのと好きになっちゃいそうだけ ど、一緒にゃァ暮らせないだろうなやっぱり….。

黒鉄ヒロシの漫画で、桃太郎の裏説ってのがあって、争いとか反抗ということを 全くしらず平和にくらしていた鬼たちの村に行った桃太郎が、あれも出せ、これも 寄越せと暴虐の限りを尽くし、さいごにゃ皆殺し…..というのがあったけど、意外 にそういう真実が、あのお伽話には込められているのではないかと思い当たったし だいです。インカに入ったスペイン軍は、まるっきりそれをやったんだしね。

エピソード

日野元彦(おしくも去年亡くなった日本を代表するジャズドラマーの一人)が、 ある日ボディ&ソウル(いまや老舗)のママ(日本ジャズ界屈指の辛口オーナー)に、
”僕はこの店を愛してるから言うんだけどさァ、ここんちドラムの音イマイチなん だよなァ。どっかで見たんだけど、ドラムのまうえの天井に布張ると随分よくなる みたいだよ。ホントこの店もママも大好きだからいうんだよ。どうでもいいって思 ってたら言わないでしょ?怒るんだったらひっぱたいてもいいよ。”

と言った途端、ママの平手打ちがとんだそうな。我々若輩者には立ち入れない状 況プラスお話、アンド関係性ではある。くわばらくわばら

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