佐山雅弘の音楽旅日記

喪の明けた正月なので一昨年まで父の着ていた大島紬に袖を入れて見ると、やァ初めてだけど着物ってなァ楽ですね。臍のちょいと下、所謂丹田に帯をこうクルリと 巻けば事は済み、食事中いつも気にしてたベルトの隠し緩めもせずにすむ。股引、下シャツを着ていれば冬の寒空も意外に平気。で、外出の折の履物こまった。草履はないが下駄ならあってそれはよいが、靴下ってェ奴ァ鼻緒に邪魔っ気でいけねェ。足袋をかうなら江戸っ子は銀座の大野屋と相場は決まってるんだがそこに行くのに家を出るのがままならないと来たもんだ。

……という訳で今回は旅日記ならぬ足袋日記ということで…….

新年会をやりました。勿論ミュージシャン仲間で集まったんだが、学生演劇のそれも脚本家ってのがたまたま居たんで、「俺達は即興を業としてるんだから君もたあの機会だ、座興で俺達に芝居させる台本を書いてくれないか」と言ってみた所、「えっ、いいんですか」と二つ返事。今どきの二十三歳なんていって捨てたもんでもないですね。ミュージシャンでも「ピアノ弾くの?じゃあここで何か一曲演ってよ」と言われて尻込みする人も多いのに、彼のその時の態度はそれだけでちょっとした感動だった。その脚本の抜粋……

佐山
—やっぱジャズだからブラックソウルだろ?

全員
—はい!

佐山
—全員アフロのかつらでいきたいんだけど

全員
—ええ-っ!?

バカボン鈴木
(御存知 PONTA BOX の Bassist、 オレとバカボンでポンタボックス労働組合という)
—じゃあやっぱ黒塗りで…

小井政都志
(御存知…じゃないかもしれないトリオまさちゃんズ の Bassist、recording から show の仕事までオレのfirst call )
—なんでそういつも受け狙いから入るかなァ

石黒彰
(大学の後輩で昔の押し掛け弟子、その後 ”和田アキラ wing ” などプログレ系セッションキーボーディストになりPONTA BOX “the new frontier”ではマニピュレイションを担当。”聖飢魔2”解散時のメンバーでもあった。)
—俺ァやだ。塗るなら白だよ。白塗りでブラックソウル。これがニューウエーブ。

三好功
(guitarist、バカボン鈴木、小野塚明らとfusion band “surprise”)
—白でも黒でもいいけど開演ニ分前ですよ

佐山
—なぬっ!?曲目も決めてないのにィ。しゃァない、とりあえずこのまま出てって何か演ろう。

~~~~~~そして即興演奏へ

いや大したもんです。ほぼ全員初対面で三十分位紹介と四方山話をしてる中に各々のキャラクターはおろか夫々のそこはかとない関係性まで掴んでる所が凄い。

村上春樹が国分寺で peter cat (のち千駄ヶ谷)っていうジャズ喫茶を経営してた頃ちょくちょく通っては何故かいっぱい語ってしまって、そのくせマスターの春樹さんが何か言ってたおぼえはないから、作家になる奴なんてのは自分じゃ喋らず、語らせ上手聞き上手で、取り込みの巧みな人種なんだろう。

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