松本照男の男気

2015年7月3日
松本照男の男気

教え:アグレッシブなグルーブとヘビーなバックビートは両立する
日本語的に言うと・・・前へ前へと進むリズム進行と重たいウラ打ち(主に2拍目と4拍目)は相反するようだが両立する。やはりわかりにくいかな。
BBキングの「Guess Who」の演奏で、ハイハットで刻んでいる3連符が実にタイトで正確なのだが音符というかリズムがその先へ、その先へと意思のある者のようにこちらの耳や心をくすぐり続ける。
ドラムの役割の重要なポイントの一つは、次のステップへの“呼び込み”だが、基本を刻んでいるクローズのハイハットが既に次の音楽を呼び続けているのだからこれは凄い。時間が経つほどに腰回りが熱くなってゆく。
そのダウンビート(小節のアタマ)に白玉を乗せる。裏拍(2とか4)で音を抜く。正確に抜くことに因って(ピアノから指を離すことでスネアドラムが鳴る、ようなタイミング)ビートを表す。たったこれだけのことが照男のハイハットとスネアドラムについていけない、乗っかれないのである。
「ハイハットは前向きで、スネアがギリギリ此処までだろうという位置まで重たい、というのはどのように調整しているのか」と取材すると、「ウエストロードブルースバンドでカバーばかりしていた京都時代に、ホトケや伸ちゃんさんざん絞られて身に付いた。計算はしていない」のだそうだ。叩き上げの熟練工のようですね。
京都でヤンキーだったようだし、女子達と飲んでても座持ちが良いのだが、それでいて、ストイックで男気を感じる場面が幾度もあった。ドラムにはそちらの面が如実にでている。
クレイジーブギナイト。永井“ホトケ”隆(Vo)塩次伸次または山岸潤史(Gi)佐山雅弘(Pf)ロミー木下(B)松本照男(Ds)。
いいバンドだった。ブルース、ソウル、ファンク。多くの曲とルーティン(ブラックミュージック特有の節回し)が身に付いたことで、ジャズにもロックにもポップスにもブルースの要素・影響は濃淡あれども入り込んでいて、というよりはもともとブルースが生まれたからその後のポピュラー音楽が生まれ育って来たのだということがどんな曲を演奏していても体内に感じることができるようになった。なってみると、本来は相反している(楽曲を通じたインテンポという概念のない)クラシックやエスニック(邦楽を含む民族音楽)とのコラボレーションにも応用が利くようになる。
だからオーケストラに入ってガーシュインやバーンスタイン、たまにはモーツァルトを弾いてても、個人的にはジャズ(include ブルース)を奏でているのです。
話が現在にまで飛んでしまったけれど、CBN(クレイジーブギナイト)は本当に楽しかったし良いバンドだった。山岸はニューオリンズに行きっぱなし。ホトケはブッチャー(ギタリスト浅野君)のこともあってのことだろうか、ブルースの求道者・伝道者のようになって素敵にツアーをしている。伸ちゃんは常備薬を持ち歩くのを忘れて旅先で死んじゃった。5年10年続きはしても、それはそれで一期一会であることだ。
今は今を生きよう、と思う。

「いいね!」して最新情報を受け取ろう!

前の記事

村上秀一の包容力

次の記事

身辺雑記7月9日