取りにくいリズム」中 リズム感獲得個人史④

2015年5月22日
取りにくいリズム」中 リズム感獲得個人史④

「取りにくいリズム」中 テクノ出現以後のロックビート:
演奏上のコツ
ジャズが前へ前へとアグレスする傾向が強いのに対して、ロックは二拍目四拍目をヘビーにすると格好よくなる。
ジャズのドラムがシンバルとハイハットつまり金物系でリズムキープするのに対し、ロックはバスドラムとスネアという皮ものでリズムの土台を作る。土台としてはこの方が重心が低いのでより重いビートの方が馴染むのも頷ける。
というわけでジャズの時はハイハット、ロックの時はバスドラムを基準に捉えて乗っかるとあとの手数は自然に出てくる。
四拍目を重くするということは四拍目を打つのが後ろに行く。ダウンビートつまり一拍目はシュッとつかみ取るように一瞬早めに捉えるとスピード感が出る。これを足すと「四拍目自体は他に比べて短い」ということになる。印象と逆で不思議な感じがするが理屈は合っている。黒田和良に教わったこと。
この辺りの論理性と言うかごくごく初歩の科学的思考みたいなことが、男の子にはたまらなく快感なのだ。模型を作ったり、時刻表を覚えたりするのにも似ているのかと思う。そちらはまったくやらないけれど。

テクノ前後についての解説
テクノと言うのは実は凄い発明だと思う。エルビスプレスリーのバンドだってビートルズのリンゴ・スターだって八分音符はハネている。人間の生理としてそれが自然だからだ。ところが科学の発展と相まって(音楽は常に社会と連動する)登場したテクノというスタイルは敢えて人工的な、機械的にハネないビートの上に音楽を構築した。
ブルース〜ジャズの出現でテンポを守る中での音楽作業が確立する。そのことによって民族固有の間合いを超えて世界中の人々が参加出来る共通言語(一定のテンポの中で出来事が進むこと)になり、それがポップスへと繋がっていったのだが、テクノの提示はその先の宇宙言語とさえ言える共通様式を生み出したのではないか。その一番の大当たりが日本ではジュリアナなどのディスコムーブメントというのはちと頂けないけれども、大衆を巻き込んでこその時代文化だと思えば肯んじ得なくもない。一方で、スティーブ・ライヒや坂本龍一、デビット・ボウイなど深いところでの人類文化を感じる音楽も生まれている。

リズム感獲得個人史④本多俊之の苦笑い
クラビネット的(=ギター的)にシクスティーンを刻むのが楽しくて結構多用していたが、どうしてもハシってしまうのでバンド内では評判が芳しくない。ただ場面によっては盛り上がるので手法の一つとしては使う。その後テレビの音楽関係に就職することになる金田君という女子がいて「佐山さんはリズムが良いから〜」といって褒めてくれたのを、横にいた本多俊之が「へぇ〜〜」と苦笑い。
音楽性としては成立しているが、リズムキープに於いて他のリズムセクションとズレていくというのは、やはり問題だ。音楽性としても成立してないやろ!
ソウルによくあるギターの単音カッティングが僕はたまらなく好き。ギターのいないセッションではこれ幸いと多用したいのだが、リズムキープというのはいくつになっても難しい。とくに人様、共演者に提供するリズムだからその責任たるや重大なんだが・・・つい自分の好みで突っ走ってしまう。
出来てる人は若いうちから出来ているのだから、僕はその方面では才能の薄い種類なんだろう。そのことでコンプレックスは感じない。才能の濃淡とそれをいかに超えていくかが個性の確立だから。
でも、リズムは良くなりたいものである。

「いいね!」して最新情報を受け取ろう!