伝兵衛の記2

2015年1月1日
伝兵衛の記2

“ジェットコースターツアー”
伝兵衛商会のツアーに誘われて一も二もなく参加した。九州を廻れるなんて嬉しい限り。初日に大分について会場はというとお城の敷地内の県民会館。「今日は誰が出るの?」と訊くと「我々ですよ」
僕はてっきり誰かの前座だと咄嗟に解釈したのだった。「自分が知らなかっただけでこの人実はそのくらいのクラスの人だったのだな」・・・とこういうところが策士といえば策士なんですね。ずっと後になって彼の50歳記念コンサートのポスターを和田誠さんにお願いした時も「僕は知らなかったけど佐山さんの紹介だしNHKホールで単独コンサートをするくらいだからそれなりの人なんだろうと思った」と仰ってた。
で、初ツアーイン九州に戻る。翌日がライブハウスだったかどうかとにかく狭い所広い所取り混ぜて彼の活動範囲レパートリィとでも言う所を満喫。これは言うなれば交際を始める時にデート場所を高級レストランからスタートして牛丼屋まで慣れさせるなかで理解を深めてもらう方法に似ている。まず正直な所から、つまり牛丼屋デートから始める方法もあるけど、どちらが効果的かは相手にもよるだろう。ぼくは伝兵衛方式にまんまと乗せられてしまった訳だ。彼が死んでしまうまで続くことになるそんな面白い”どこでもライブ体験”の中でも二カ所忘れられない所がある。
国分(鹿児島)ではライブも行うスナック状の店。ピアノが無くてヤマハDX-1の初期型1台ポツンと用意されている。ピアノの音色も何もあったものではないのだが伝兵衛自身がギターと歌なのでそこはそれなりにオブリガートやストリングスセクション、ブラスセクション、クラビネットリズムパターンなどでお遊び盛り上がり。それなりにというか結構楽しく終えた。店の人も大喜びで「次回も必ずDX用意しておきます!」・・・ピアノにして欲しい・・・
もう一カ所は“串焼きテルちゃん”。大分市の目抜き通りにある間口一間(イッケン)奥行き十間の縦長の店。長〜いカウンターと平行して並ぶテーブル席。20人も入れば一杯の空間でなんと伝兵衛はカウンターに腰掛けて歌い、テーブル席に無理矢理置いた電子ピアノを僕は弾くのだ。あまりと言えばあまりの設定だがその年最高の演奏が出てしまったりするんだなぁ。“こんな所でたった今俺は今年最高のプレイをしているゾ”などと東京文化会館を思い浮かべながら。乙なもんである。

関西再発見・河内と淡路島
その1“ダルマード”
大坂南部、いわゆる河内地方は摂津尼崎人としての僕には縁の薄い所だったのだが伝兵衛に連れられたのが松原ダルマード。“鄙には稀な”というが実にバーらしい大人のバーなのである。オーナーはカジさんという。さほど年も取ってないのに趣味の良い大人な人。若い時からちゃんと大人な人というのがたまにいますね。僕の同級生にもいた。松田信夫君。所を得ないまま三十台でなくなってしまった。
引き合いに出すには大物過ぎるけどバーラジオの尾崎さんなんかもそういう人だったんだろうと思う。バーラジオのレッドアイの素晴らしさは思い出すだけで幸せになる。バーというのはそういう場所であるべきで、やがて難波黒門市場前に出来るダルマードに足しげく通う事になる。天下茶屋のニベさんも同じ匂いのする大人で件(くだん)のNHKリサイタルでは舞台上に設えたバーのバーテンダーになってもらうことになる。背景でありながらそりゅえに実にリアルな絵面になっていた。上質の映画のように。
その2“ジョルジュ”関西の味に目覚める・・・に続く

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