君の輝く夜に響く曲たち

M1 オープニング
 これは悩んだ。「恋と音楽」があまりによくできていた、あるいは育てていただいたので、それに変わる同種類で同レベル以上の曲というのは難しい。いくつもモチーフを作って見ては展開をシュミレートして却下してというのを繰り返してうまくいかず、一旦別の作業に入った。
 別方面でマーラーの交響曲を勉強している中で何番だったか「この冒頭の7度音程が全曲を支配している」という解説を読んで閃いた。7度音程で始まるのはポピュラーソングとしては新鮮だ、そこから作ってみよう。ドシ・レド・ミレ・ファミ・ソファ・ラソ・シラ、のどれもから作ってみる。ソファ、の音程にしっくりくるのが出た。あとは次に聞こえる音を辿ってゆく。
 書き進めている段階ではまだ外出ままならなかったので何度か自宅に脚本家と制作チームに足を運んでもらっていたある日に、他にも作っておいた何曲かを鈴木さんに聞いてもらうと果たしてこの7度音程のものを選んだ。その上で「サビもよくできているけどもう一つ別の“大サビ”がほしいね。歌い出しはオペラチックというかピアノコンチェルトみたいにしたいね。」と言い残して後半を描くべく帰って行った。この時点では1幕のプロットしか出来ていないのである。アレンジや楽曲構成に違う視点からアイデアを差し込む所が彼の真骨頂。今回はデモ音源を作る際のディテールアレンジやその後についてくる歌詞との整合などコウタと鈴木さんのリレーションもうまく噛み合って、僕一人では表せない世界が広がったと思う。
 さて“大サビ”という宿題をもらってマーラーに戻る。一体マーラーというのはドイツ・・・でもくくりきれない独特のメロディラインと和声が魅力で、構成の複雑さと曲の壮大さに紛れて気がつかなかったその部分に目覚めてみると実に親近感を持って聞けるようになる(なった)のである。そこで緩徐楽章の不思議綺麗な部分を取材して和声進行だけを抜き出し、ビバップ期のパーカーよろしくジャズメロディを乗せる。転調に見えて元調である歌いにくい音列。こういう荒技はある程度以上ハイテクな歌手でも案外難しく、提供しづらいものだが、今までの経験で吾郎ちゃんは覚えてしまえば誰よりもきちんと歌えることを知っているので作り上げてしまう。
 さて最後に出だしの調整が残った。ピアノコンチェルト風というのでグリーグのティンパニィ始まり→シューマンのオケとピアノの掛け合い→ベートーベン風のピアノカデンツ→バイオリンのカデンツ、という構成にして歌の出だしを待つ。このテのアレンジというか換骨奪胎はお手の物。かくして華々しい4人の登場曲が出来上がった。

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