佐山雅弘の音楽旅日記
大雪山越えは雪が降った。阿寒湖には氷が張ってたし、四月の末だというのに、これだから北海道は侮れない。
「トリオマサちゃんズ」のツアーである。去年の九州、中部、東北、今年の近畿~中国に続いて、足掛け2年で全国ツアーを終える事になるこの日は、言いだしっぺの帯広から最終地の愛別への車移動である。
帯広にはちょっと前まで「Add」といういかしたJazz屋があって何度かお邪魔もしたのだが今はなく、たまたま知り合った橋場さんという女性が何とか地元でマサちゃんズ(大坂昌彦はこのネーミングに大反対である。漫才コンビみたいだからだという。オレはそれが面白いんだけど)を聴きたいと言ってくれたので、北見の「Jazz Fool」(これもふざけたネーミングではある)に相談してみて と教えると、今時はメールってものが便利ですね、あっという間にメル友になってくれてトントンと決まって11日間休みなしのツアーとなった。ありがたい事である。そのためにJazz Circleを帯広に作っての主催なのだからその行動力たるや大したものだ。
北見のJazz Foolというのは長い歴史のあるサークルで、当地だけに留まらず、道東は勿論ほぼ全道にネットワークを持ってるといっていいだろう。一人の熱意とそれにあたたかく応える経験豊富な人達、そしてそれに賛同してくれる各地のジャズファンのリレーションで演奏旅行が決まる。これは美しい。イベンター仕切りもプロっぽく動き、ケータリング等楽でいいけど、50人~200人の小さいコンサートを各地歩くような(つまりマイナーな)ジャズには、今回のようなあったかみが音楽もよくしていくような気がする。何といってもアドリブの世界だからね。
函館の手作り生ハムとメルローの赤、栗山町の大鳳ラーメン、旭川の蜂屋、雄武の毛ガニ、佐呂間のほっけは馴染みのあるそれより小ぶりで引き締まっていて、みりんの味付の上手さと相俟って実によかったし、愛別のきのこも流石にうまかったし、食べ物にも恵まれたのだが、一番大きいニュースは札幌の「くう」旭川の「Jazz」という、共に去年Openしたライブハウスがピアノ、音響、その他素晴らしい店だったことだ。「くう」にあるのはヤマハのG-3。これは個人的にはきらいな方の機種なのだが、ここのは当たりもよかったのだろうが、調律的のメンテナンスがよいのだろう。実にいいレスポンスをする一台だった。「Jazz」(と書いてズージャと読みたかったのだが分ってもらえなかったそうな)の方はBostonの5フィートで、知る人ぞ知る隠れた名器である。そうと知っていたら早入りして3時間程バッハやベートーベンを弾きたかった。
それにしても日本ってのは豊かだなァと思うのは、そこそこの田舎に行っても立派なピアノが出回っていて、それ以上に各地の調律師がハイレベルであることだ。アフリカ一月回ったり、ちょっとずつだけどヨーロッパやソ連(崩壊寸前)ではこうはいかなかった。アフリカではムッシュウ鈴木調律師が全ヶ所汗だくで格闘していたのを、感謝を込めて微笑ましく思い出す。
調律師のギャグをひとつ。
調律師の免状は世界一むずかしい試験だ。数え切れないテストを受ける。一律師から始めて二律師、三律師 そして九千九百九十九億九千九百九十九万九千九百九十九律師の試験に受かったらその次にやっと調律師(兆律師)の試験が受けられる !?