佐山雅弘の音楽旅日記
今年の仕事始めが三田倶楽部での大坂昌彦セッションで、ベースの塩田もよかったしアルトの太田剣の音が実に俺好みのい~い音してて…聞いてみると池田篤についていたことがあるそうで、さもありなん。てことは辿ってみれば土岐英史に行き着く…という訳でもないんだろうけど藤陵雅裕や小池修など、土岐門下のプロ率はかなり高い上にハイクオリティ。堀井勝美によればレッスン風景は、とにかく延々、フレーズのバトルに終始するのみだそうだが、大したもんである。自分に神経質で他人には冗談言ってるか悪戯を考えてるだけの人間だと思ってた私が悪かったデス…..
んで、その日の休憩時間に掛かるのが、ずっと椎名豊の新譜で、選曲、アレンジ、プレイヤー全員の演奏、全てよいのでびっくりした。レコード時代と違って一枚の演奏時間が長いのでCDが終わる前に次のステージが始まって、再び休憩時間にまた同じCDが掛かる仕組みになるわけですね。時々行っているお気に入りの四谷いーぐるではCDでもレコード片面分で次の盤に移ったりして音響システムと相まって僕達世代のジャズ喫茶ファンは嬉しかったりもするが、それはまた別の話。
椎名のことである。数日後の空き日に彼のライブを発見したので早速でかけたのだった。ベースに俵山昌之、ドラムは初めて聴いたけどとってもよくて23才だってぇからまた感心してしまった高橋信之介君を従えて、Cider Waltonの「Bolivia」からIrving Berlinの「All the things you are」、Thelonious Monk「Ruby, my dear」と続くので純粋にジャズファンとなってキャァキャァいうとりました。その演奏もよかったんですがね、店がイイんだな、これが!
ミュージシャンならずとも音楽ファンならいつでも夢想するだろうマイルーム、作り付けの本棚にずらりとレコード&CD、意外に多く出版されている音楽関係の新書類にまじってチラリと文学書、整然と並んだJAZZ ALMBUMのなかの一区画にフルトヴェングラー(オレならカールベームだね)、広い窓を背にグランドピアノ…よだれのでそうなひろ~い部屋のカウンターでライブを待ってる間に出てくるのが、おでんとアツカンなんだからもう近所に引っ越してこようってなお店で、近々ずぇ~ったいライブやりに押しかけようと決めた帰り道が….けっこう遠いんだなぁ。「Jazz in F」という西武線富士見台にあって東京都なんですが世田谷の西端から行くと…..十分旅日記。
エピソード
ポンタがジュリーのツアーで新幹線を待っていたら、ハナ肇(故人、ジャズドラマーから俳優、TVシャボン玉ホリデーでの共演者というよりは沢田研二にとっては公私に亘っての恩人系)を見かけた。初対面だけど、後輩として挨拶ぐらいはしなくてはと、「ハナさんでらっしゃいますか。私、沢田さんの所で叩かせていただいております、ポンタといいます。お見知り置きのほどを」
「ああ、君がポンタ君か、いや噂は聞いてるよ。まあしっかりやりたまえ。」
「ありがとうございます。」
やがて列車が動き出して暫くするとハナ肇、指定の座席を探しつつポンタやジュリーの車両へ。ジュリー、グリーン車での人目もかまわず直立アンド最敬礼。
「ハナさんご無沙汰しております。」
「おう沢田、さすがにイイ兵隊つれとるなあ。こいつはよ、ポンタっつってな、むかしからいっつも俺のこと見に来ちゃプレイを盗んでたもんよ。ま、なかなかみどころもある奴だから、面倒見てやってくれや。」
ポンタ唖然としていたが、思わず立ち上がって、
「その節はお世話になりました!」