佐山雅弘質問箱 2015年8月

イノジャズ
ブルースとジャズの違い、あるいは似てるとこ?
投稿日時:2015/08/12 01:07
佐山さんの演奏をはじめて聴いたのは、当時の私のアイドル永井隆さんのバンドだったと思います。ブルースから音楽が好きになり、今はジャズをハーモニカで演奏したいとクロマチックハーモニカを志し苦戦しています。ジャズはなんかアドリブの意味もよくわからなくて難しいと感じています。昔よく聞いてたブルースのレコードを聞くと単純でいいな~と思ったり、また単純なので何曲も聞くのはシンドいなーと思ったりします。
お尋ねしたいことはジャズとブルースのアドリブの違いってどのように考えていらっしゃいますか?両方やるとどんな事気づいたりするのでしょうか?
佐山雅弘
Re:ブルースとジャズの違い、あるいは似てるとこ?
投稿日時:2015/08/14 00:43
 山岸に連れられて永井ホトケと出会うまで、所謂”ブルース”というジャンルとは無縁でした。でも最初に好きになったのがオスカーピーターソンの”Hymn To Freedom”で、十分ブルージーな要素は身体にはあって、何とかセッションをしてましたね。近藤房之介が切り回していた”STOMP”という店が下北沢にあって夜な夜な飲んでた。「僕がきたらとりあえずロバートジョンソンをかけてくれ」と頼んで、曲が変わっても違いがわからなかったのがひと月ぐらい通ううち、ある時「これ、このあいだも何だか耳に残った曲だな」とうっすら認識が出て来て、それからあとは加速度的に色んなことが見えるようになりました。
体験談はともかく質問の答。
まずは具体的な対処法を。
ブルースのフレーズは基本的にはそのキーのブルーノートですね。CのキーだとCのブルーノートスケール。コードがFになってもFのブルーノートではなくCのブルーノートスケールを当てていく。
この方法をブルースでない曲、たとえばジャストザウエイユーアーなんかに当てはめてアドリブすると、ツルリとブルースな曲になる。
ブルーノートというのは一種のモード(単一の音並び)なので音選びは簡単。あとは聞き込んで雰囲気を身につければよいだけ。とはいえそのフィーリング体得が、難しい人には難しい所です。僕もそうでした。そこで前述したストンプでの連日飲み、みたいな外堀から攻めるような学習方法になる。
ジャズ。ビバップやモードの曲でもブルーノートを当てはめてそれなりの場面を作ることはよくありますね。チャーリーパーカーの時代から大いに行われていて、前面に押し出したのがファンキージャズ。モーニンとかソングフォーマイファーザーですね。僕の個人史としては歴史とは逆順にそちらから覚えていったのでファンダメンタルなブルースにも対応出来たのかも知れません。
そんなこんなであまたセッションをする中でたどり着いた僕の理想とする所は、と言えば。
どんなジャンルの音楽でも一緒。”心を真っ白にして聞こえた音を弾く”ということで、ジャズの中でもモードの曲をしていればそれ風なアドリブが聞こえて来て(心に浮かんで)それをつかみ出して現実の音にして弾く。これを次々に繋げ、続けると足跡のように自分のスタイルになっていく。ビバップ、スイングなど他のスタイルでも同じ。そしてそれがブルースだったら当然ブルース調のアドリブが浮かんでくる。時には演奏しているジャンル風じゃないフレーズが心をよぎる。その時はためらわずにそれを弾く。ブルースのドミナント部分でビバップ的なメロディ、とか。トニックの続く最初の4小節で5度のドリアンモードを基調にしたアドリブを展開するとか。先にも述べたようにAORの曲でブルーノートを押し込む、とかね。
基本的には、マイナーペンタトニックが弾けて、リズムに乗ってフレーズを出していけばブルース演奏は成立します。ジャズもロックもそこから始まった音楽だから、どこまで行ってもブルースの要素は入っています。
「わからん!」と叫びながらブルース浸りの何週間。当然お酒付き、友人付き。試してみたらどうでしょう。ブルースが身に付かなくても楽しい期間にはなりますよね。

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