佐山雅弘の音楽旅日記

長いテーブルの一ダースほどの人が楽しそうにがやついて、カウンターの客はそちらをチラチラ見遣り乍らひそひそ話している。五十嵐一生がいたのでまずは一曲”stellaby starlight”を演ってビールにありつき、”cotton tail”で赤ワインを一杯貰い、”I thought about you”の後にマイヤーズを手にしてテーブルにつこうとすると真田広之が歌うというのでピアノにUターン”sentimental journey” “round about midnight”と続けていると傍らに桃井かおり嬢がにこにこしているので前に演ったことのある”good bye miss new orleans”を弾き出したが彼女は歌わないと言う。やっと落ち着いて飲み出した。(と言っても僕はピアノを弾いている時が一番落ち着いているのだが)

八戸の’ROXX'(チャーミングなユキちゃんが名物ママ)での伊藤英彦トリオの翌日のことである。南郷村(知らなかったが実に十二年jazz fesを続けていて、遂に二年前村営のjazz clubをつくった)の’ジャズの館’でリハーサルを終えてから特急一時間で盛岡のミステリー映画祭に参加(勿論演奏もしたのだが、’真夜中まで’という和田誠監督作品に、五十嵐一生、道下和彦、小井政都志、井上功一と共に真田広之扮するトランペッター守山紘二のバンドメンバー及びPA係として出演しているのだ)、とって返して’ジャズの館’で二時間の本番、当然打ち上げもそこそこ盛り上がった所で、今度は東北自動車道を盛岡までスッ飛ばす。オリオン座がおおきく山の端に腰掛ける左かなたに、ぶらさがってるような三日月。車から首を出しっぱなしで、寒いもそうだが危ないでしょう。しかし綺麗だった。満天の星”in the velvet”ですね。

そしてホテルに到着したらスタッフが待ち構えていて、旅の荷を解くどころかフロントに預けて即、”皆さんお待ちです”と連れられたのが ”ニッカ亭”というグランドピアノの置いてあるバー。ピアノのことを別にしても酒の多種多様さ、バーテンの技術、物腰などとても僕の好きなタイプである。旅先全てにこんなお店があったらそりゃ素敵だろうけど、寝る時間はなくなるね。

というところで今回はchan-chan。佐山雅弘でした。

P. S . Bill Crow 著、村上春樹訳で ”ジャズアネクドウツ”と言うとってもイカしたミュージシャンの逸話本があるんですが、このページを借りて、日本のミュージシャンのエピソードを紹介していきたいと思います。

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