佐山雅弘質問箱 2015年10月

jvocal
アドリブ技法としてのモチーフ展開
投稿日時:2015/10/27 00:05
 ジャズ即興を身に着けるのは幾つも方法がありますが、今までは、聴いた蓄積から出てくると思われるコード感→脳内フレーズ→(ソルフェージュ力)→指、という流れで質問させて頂いてました。

他によくあるアプローチとして、モチーフ展開というのがありますよね。3音とか5音とかの音形を作ってそこから鏡面展開(上下をひっくり返す)したり、モチーフに別の音形(エクステンションとかフラグメントとか言ったりするようです)をくっつける(前とか後に)ということになるようです。先日、このアプローチを教わる機会がありました。

なるほど、スケールだけ覚えたけど歌えないという状態から抜け出る方法としては有効かもしれないと思いましたし、指癖から脱却する一つの方法かとは思えました。

ただ、よく考えてみると、①最初のモチーフをどう設定するか、②コードが変わった時に最後の音がアボイドにならないようにどこから始めるか、③ハーモニックリズムにどううまく当てはめるか、などをすべてクリアしないと、最終的に歌う即興にならないのでは?という疑問も湧いてきました。

それなら、最初から脳内で歌うフレーズを鳴らし→ソルフェージュ力を磨いて→指という(王道的?)アプローチの方が早いのかなとも思えて来ました。結局、①、②、③をクリアしたいいフレーズが脳内で浮かぶようになれば、ソルフェージュ力さえあれば指で弾けるようになるので、その方が早いのかなと。

ただ、以前雑誌で大好きなゲイリー・バートンがグリーンドルフィンを題材にして、モチーフ展開の方法についてレクチャーしていてなるほどと思った記憶があり、やっぱり必要なのかなと迷っているところです。狭山さんはモチーフ展開についてどうお考えですか?

佐山雅弘
Re:アドリブ技法としてのモチーフ展開
投稿日時:2015/10/31 11:18
モチーフ展開の基本はなんといってもテーマメロディの発展させ方ではないだろうか。あとで具体例を考えるとして・・・

①最初のモチーフをどう設定するか、
メロディの始め方はA:コードトーンB:スケールトーン(=ダイアニックトーンであってコードの基本音ではない)C:ノンダイアニックトーン のどれかです。大雑把にいってどんな音から始めてもメロディの印象はこの3種からくるどれかに集約されます。あと重要で効果的なのはダイアトニックであってコードトーンでもない、たとえがCメジャーでFの音から始まるとか、G7に続くDm7なのにbの音がメロディの主要な音になっているとか。こういうのを「非和声音」といってその項目のためだけの分厚い教科書があるくらい。サボってばかりの学生時代だったが、これだけは熟読したもので、今また欲しいんだけど見つけられなくてね。
閑話休題。カルロスジョビンがこれの大家ですね。作曲全体が雲の上の天才だけれども、殊更この非和声音の使い方のうまさと言ったら空いた口からヨダレがだらだらとまらないですね。アドリブの展開としてはキースジャレット。この人の後期、特にスタンダーズに置けるプレイはスケールや機能的なアドリブというよりは無限に良いメロディを作曲しつづけて乗せていってる感があって、そのメロディ作製の連続の中で非和声音の扱いの見事さがめまぐるしく現れてます。

②コードが変わった時に最後の音がアボイドにならないようにどこから始めるか、
そんなことは簡単。メジャーコードの4度をシャープするとかハーフディミニッシュの2度をシャープするとか、セブンスで困ったらオルタードかリディアンセブンスかの選択で12個の音の殆どは(非和声音やノンダイアトニックの考えを使えば全部)使えます。
といっても基本的にはダイアトニックトーンのどれか(展開して当たってしまった音を上下どちらか)にずらすことで解決出来ます。

③ハーモニックリズムにどううまく当てはめるか、
ハーモニックリズムというのは体感ですから、「決まったな」「ちとおかしいか」「おかしいようだけどこれはこれで」と言ったような判断基準で成長するしかないかも。
とはいえそんなことを言い出したら全ての理論やメソードもそこに収斂されてしまうので「うかんだフレーズのハーモニックリズムとの整合性のとりかた」なんていう項目もありえるでしょうね。布川君や納君辺りが説明上手だろうな。

ソルフェージュ力さえあれば指で弾けるようになるので、その方が早いのかなと。

常々思うに「全てはソルフェージュ能力」ですね。ヒトの言ってることがわかって自分の語ろうとすることを整理出来る、これが会話に基本(守れてないヒトも案外多い)ですがジャズのセッションはまさにそれでしょう。書かれた譜面とはいえどもクラシック音楽も大基本はそこのハズ。

狭山さんはモチーフ展開についてどうお考えですか?

佐山です(笑)。チャーリーパーカーウイズストリングスの「April In Paris」を聞いていて発見と言うか納得したんですが、メロディのフェイクには3種類。
①メロディ自体のフェイク。シンコペとか音足しとか
②前足し。メロディに入る前にフレーズをいれてつなぐ
③後足し、メロの最後にいくつか音を付加する。
「蝶々」5-3-3—|4-2-2—|1-2-3-4-|5-5-5—|←一つの単位が八分音符
①05–3003|4-22—-|01020304|5505—-|
②一単位16音符で #234#4|5—3—3—5b543|4—2—2—3432|1—2—3—4—|5—5—5—|
③同じく一単位16音符で 5—3—3-150000|4—2—23420750|1—2—3—4—|5—5—5-434276|
やはりこのコーナー、五線紙が使えるようにしたいですね。追々考えますが、これらを混ぜ合わせると、
#234#4|5010504305671235|454320107-650432|1050205031234234|5#451504300000000
ちょっと見た所では元のメロディが無いかのようなラインも出来てくる。

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