佐山雅弘質問箱 2016年8月

TE君
はじめまして
投稿日時:2016/08/19 02:45
「枯葉」の教則ビデオは繰り返し鑑賞しております。
グランドピアノの脚柱が3本の理由ネタはツボだったりします。

その頃担当されていた『ゴールデン洋画劇場』は秀逸で、映画本編を観ることが無くともオープニングだけ視聴することもありました。
アニメの尺にシンクロしたテレビサイズだったので、それぞれのテーマをフルコーラスで拝聴したいと当時からリリースを待ちわびており、もっと劇伴に携わって頂きたいと思う程のオーケストレーションです。

さて、メロを下声で弾くカントリー奏法についてなのですが、重音のトップノートに選ぶ音や定番フレーズ、またお勧めの3度トリルをお伺いしたいです。

あと、ローズ等のエレピをお弾きになる際、スタンスを変えていらっしゃることがもしありましたらお教え下さい。

佐山雅弘
Re:はじめまして
投稿日時:2016/08/19 09:45
お便りありがとうございます。僕の悪いクセで、肝心なこと以外に言いたいことが山ほど出てきちゃうのでエッセイ代わりに使わせてもらっちゃいながら、対話方式で書き進めます。飛ばし読みしてもらって結構ですからお付き合いください(ってどっちなんでしょうね?)。

「枯葉」の教則ビデオ

ありがとうございます。ファンの間では“ジャズ漫談”と呼ばれながら好評なのです。

グランドピアノの脚柱が3本の理由

大元は羽田健太郎さんネタ。

『ゴールデン洋画劇場』/もっと劇伴に

それはそれは嬉しいです。もともとのタイトルバックは八木正夫さん。アニメーションは勿論和田誠さん。番組編成替えで10秒短くする際に八木さんがこの世にいなかったので、和田さんのご指名で働きました。プレッシャーもキツかったし、仕上がりも八木バージョンのあまりの素晴らしさに自信が持ちきれないでいました。だからそういう感想はとても嬉しく、有り難いです。
劇伴奏やCMもいくつか手掛けてはいたのですが、音楽監督<音楽プロデューサー<代理店<クライアント。音楽に無関心な度合いが強まるほど決定権が大きくなる、という図式がどんどん定着してきて、ある時期から断る方が多くなりました。CMは特に番組ナカより音量を上げるのが当たり前になってしまったし(昔は音量を揃えましょう、などと奨励してたものですが、クライアントにゴマを摺りたい代理店には逆らえなかったのですね。)名曲を使っていても音楽的なことに全く関係なく秒数でブチリと途切れるのが当たり前になってますね。心が痛むのでTVは観ません。
というわけで、気心の知れた作家(和田誠さんや鈴木聡さんETC)と好きに書ける環境が整った場合のみ働いてます。プロとしては我儘なんですけどね。

内声でメロを弾くカントリー奏法/重音のトップノート/お勧めの3度トリル

カントリー奏法というのがよく分かりませんが、メロディを弾く時に旋律より高い音を付け足すことだと思います。トップノートに付け足す音としては“コードの1か5”。Cだったらcかgですね。ビートルズ、イエスタデイ。キーがFとして、サビの3小節目のC7のメロに上のcまたはgを足しながら弾く感じ。あとは“調性の1か5”。同じイエスタデイの出だし2小節目。A7でトップノートにfを足しながら(最後のfが単音に合流)と弾くと感じが分かります。
3度トリルの基本形はコードの3°5°でしょうね。ついでだからイエスタデイにするとアタマのFでのバッキングでacのトリル。2小節目のA7ではc#e。転回してec#でも。展開してc#aの6°もきれいです。いずれも下部の音に向かって半音二つ三つグリッサンドぽく入れてからトリルする。

ローズ等のエレピ

フェンダーが出始めの頃に入っていたバンドのリーダーに「エレピを弾いている時の方がサウンドが良い」と言われたことがあります。団子(密集系を含む音数の多いボイシング)で弾くと、生ピアノのように響かず、うるさくなるだけ。ギターのボイシングや和声法の基本を意識して4声体主体に弾いていたのですね。これは生ピアノにフィードバックしても役立つのでオススメ。あと一つは音出し、音切りのタイミング。アタックも減衰時間も生ピアノと随分違うので、コードの弾き始めはバスドラの中(ドゥンという音のドゥとンの中に嵌めるイメージ)、コードの抜きはスネアの中(バシンという音のバとシンの間に嵌めるイメージ)。具体的にどうこうというより、それほど気を使って演奏することが効果があったのでしょうね。このことは今でも気をつけています。鶴谷智生・バカボン鈴木、なんていう一流のリズムセクションに入ってこれをやると、まぁ面白いほど決まってキマッて、バッキングを8小節もやっているうちには随分ハイになっちゃいます。エレピはバッキングが楽しい。ファンクもので白玉弾きながらバンドのグルーブに身を任せている、なんて状況はもはや天国ですね。

 

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