ジョニー吉長の自然体

2015年8月14日
ジョニー吉長の自然体

教えその1(腑に落ちないフレーズ・歌とドラム):
「いいから弾いてごらん、素敵だから」
“真夏のサンタクロース”という曲だったと思う。サビでセカンドリフを入れよう、とジョニー。フレーズを歌う。5—2—5—2-2—|5—2—5—2-2–|というジングルベルのようなフレーズ。それは良いが、他のどの楽器のフレーズともリンクしていないし、コードトーンからは多少外れるしで、「そこだけ僕が一人でバンドとは別に演奏するみたいでやりにくいし、フレーズとしてハマるのかなぁ?必然性がない感じだけど」と悩んでいると「いいから弾いてごらん、素敵だから」と云って、そのためだけに30分ほどのワンセッションをする。この辺りはロックバンドは親切と言うか一蓮托生なところがあって丁寧な音楽制作ができる。
やり始めは先入観のようなものが邪魔してか、腑に落ちないままに弾いているのだが、何度か繰り返すうちに、えも言われぬ対位法になってくるのですね、これが。「ジョニー分かったよ、(体に)入った。」と嬉しく言うと、機嫌の良い時の彼の口癖「じゃん?」
こういうところがバンドの醍醐味なのだな、と感じる。理論的整合性にこだわるばかりでは人の心をつかむ音楽にはならない、ということも学んだ。
泉谷しげるさんのバンドにセッション参加した時、ギターの高橋君がカッティングでもなく和音でもなく、太〜い太い、それはそれは太い音で一音を4拍も8拍ものばして、リズムは泉谷氏本人の生ギターと吉田健(B)村上ポンタ(Ds)。得も言えぬロックっぽさが漂って陶然としたものだが理論的な背景は当然見えてこない。この”結果ロック!”というところがいいですね。
一体に“ロック”という音楽は演繹的というよりも帰納的な曲作りないしサウンド作り。常に試行錯誤を繰り返しながらルーティンに頼らず、都度都度に直感・完成を研ぎすませて作り上げていくようだ。回り道にもほどがあるように見えて、出来上がったそれぞれが独立した輝きを持つ宝石になっていく。
阿(おもねる)る(様子を窺ったり相手の耳障りの良いことを選んで語る)ことをしない。権力・常識に対しての懐疑を常に孕んでいる、という要素と相まってロックミュージック、そしてミュージシャンを素敵に見せる働きをするのだろう。ポップス化してからは薄れてしまったけれど。

それにしても贅沢な話である。ロックレーベル“江戸家”が元気な頃で、世田谷深沢のスタジオに集まってはセッションし、まとまったらレコーディングする。昼夜深夜お構いなし。チャーや加部さんも遊びに来てミーハー的に嬉しかったりした。
僕は高校時代フォークバンドのベースを担当していたことがあって、中学生の頃から好きだった“ゴダイゴ”(ミッキーやユキヒデが参加する前の初期)でのルイズリス加部が弾く独特のベースラインにとても魅せられ、憧れていたのだ。
バーニング・ウエイブ→プリズム→クレイジー・ブギ・ナイト→金子マリMAMA、というバンドつながり(見事にジャズ→フュージョン→ブルース・ファンク→ロックという流れになってますね)でたどり着いたジョニーのソロバンド。初期は伊藤コーキのベース、森園勝敏のギター、マック清水のパーカッションというラインナップ。達郎で忙しい(コーキ)とか大江千里だの渡辺美里だのしょっちゅう西武球場に行かなくてはならない(マック)とか僕からは遠い遠い世界のような話が飛び交いながらの諸事情があって、やがてベースにロミーを迎え森園との4人体制が固まる。
ジョニー(吉長)、ロミー(木下)、サヤマ、モリ(森園)のイニシャルを取ってJRSM。ジュラズムと読ませる。
ジョニーと一緒に演奏していてとてもラクだったのは歌ってドラムを叩くところ。
ドラマー。キープしつつ(ビートを)溜めたり(グルーブを)アグレスしたりする。そして段落をキメ、ダイナミクスをコントロール。裏コンマスなのである。
一方歌手。歌自体がリズムも出すが(自然に歌に現れる基本的なノリが体内で発動していないとセッションにはならない)ニュアンスでフェイクしたり、先歌い、後歌いなど織り交ぜて世界を作ってゆく。
ギター、ベースそれぞれにいっぱい役割はあるが、キーボードの役割をごく単純化すると、歌のニュアンスとドラムのキープという表面的には矛盾する二つの要素の間で、場面に応じてどちらにつくか、あるいはどうつなぐか、ということになる。
ジョニーはドラムと歌がそれぞれ独立しているのである。不思議なことだ。笑いながら怒る人、みたい?
アグレッシブなハイハットワークに絶妙にヘビーなタイミングでの“イ〜イ”音のスネア。歌はと言えば、日本語英語を問わず歌詞のニュアンスにぴったりのリズムフェイクと感情の入れ具合、突き放し具合。ピアノの弾き語りは勿論、ドラムを叩きながら歌う人々も大勢いるが、ジョニーほどのミュージシャンはまだ出ていないと思う。松本照男のドラムの素晴らしさで彼自身が歌う場面が多少彷彿とさせるかも知れない。
さてJRSM時代に入ってバンドは大きく動き出す。その中でとてもいいジョニーの話があるので、この稿、続きます。

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