M3ーM6

2016年2月28日
M3ーM6

M3a 恋してる二人は
“朝も昼も真夜中も”と、M2の福本さんと同じ歌詞で始まる同じ曲。ところがこちらは、恋人に焦がれる気持ちを歌う。
甘く切ない感じを出すのに“5度クリシェ”という技法を使って、焦燥感と停滞感を表してます。稲垣さんの音域の中の中程を使って。落ち着きながらも切なさの出ている、いい歌唱です。

M3b 恋してる二人は
そしてこちらは二人が恋の始まりの日を回想する。
メロディをコードとは違う音に設定するという、高度なJAZZアレンジ。音程を取るのが難しいのですが、覚えてしまえば狂わない稲垣さん、ソルフェージュがバッチリの真飛さんなので安心して書きました。このあたり、シリーズの利点、座付き作家の強み。

M3c 恋する二人は
M2のなかのサビ部分、“♪げきじょうへようこそ♪”のメロディを使って“恋をするふたりは”と歌い出す。3曲続けての冒頭曲別アレンジ構成は、そのままAAB形式の一曲が散りばめられたことになっている。計算だけで出来ることではないが、緻密な頭脳でないと生まれてこない。
“今回は全体を通して佐山君の大好きなジャズワルツがないのね”という清美ちゃんの一言で、この曲のワルツアレンジを決めました。メロディの変換は、初日にピアノの代役を務めた鈴木瑤子。若干20才ながら充分な素養とテクニックを身につけたジャズ界期待の若手です。栴檀は双葉より芳し。

M4 グッドタイムシアターバンド
絵の中のバンドが生演奏。夢のあるシチュエイション。
鈴木さんからの発注は、アービングバーリン初期の傑作“アレキサンダーラグタイムバンド”のイメージ。最初にかなり似たリズムで作ってみた。次に日本語のイントネイションと間合いで作ってみた。そして真ん中のフォーク調の部分。このジャンルは僕の青春まっただ中なので、吉田拓郎になりきって作る。その後、このフォーク部分のオリジナルメロディをアタマのスイング部分に当てはめてみると、ちょうど良い変奏曲になる。3パターンプレゼンテイションした所、プロデューサー、制作者、脚本家の三者一致で第3案。
福本さんのフォークアイドルは谷村新司だったそうで、彼がアドリブで入れた「ありがとー!」が利いている。

M5 修司の憂い
明るい曲を一つ挟んで、再びM2のメロディ。今度は不安感たっぷり。台本の指示は“不協和音で”。無茶ぶりですね。
増音程、減音程という、最高難度のソルフェージュ(音取り)。劇中の修司君は、苦もなく歌いながら芝居に仕立て上げています。

M6 麗子の憂い
今度は麗子の不安。マイナーに変換。平行調という。中盤、希望を持ったメジャーコード。後半またマイナーに戻るが上へ上へと上がっていく和声進行で、自らを奮い立たせる気持ち。最後は“神頼み”というのがいいですね。バッハのトッカータを洒落気味に入れました。

M3の三つ、そしてM5、M6と短い5曲分をメインテーマの楽曲で構築することで、この演目の輪郭をくっきりと際立たせる。鈴木さんの大技です。

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